日常1 《黒猫亭の看板娘》

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私の店【黒猫亭】 一階部分は店、二階部分を居住スペースとして使用しています。 一応、改築はしたのですが古い家屋と言うのは寒いものです。 まだ9月、夏を終えたばかりだと言うのに今日の朝は冬の始めを告げるような寒さですね。 しかし、だからこそ【ダイフク】の暖かさが心地好いです。 ・・・前が見にくいのが難点ですが。 手探りと小さい視界をフル活用しながら部屋を出て下へと続く階段に向かう。 途中(にゃー。)と足元から響く鳴き声。 この少し高めで控えめに発する鳴き方は【シナモン】。 彼女はとてもしっかり者です。 カラーは薄いクリーム。 少々、人見知りしますが猫らしくて実に良いと思います。 「シナモン、おはようございます。」 《にゃ。》 ・・・ふふ。 控えめな彼女らしい短い返事ですね。 ・・・まったく・・・愛らしい。 しかし・・・ 「シナモンさん。貴方は何故、私の足をよじ登って来ているのですか?ご馳走さまです。あ、いやいや、間違えました。そんなに足に張り付かれると歩きにくいのですが?」 《・・・。》 ・・・ぐっ! 無言ですが、つぶらな瞳で私を見つめるとは・・・この子、自分が可愛いと知っていますね。 「・・・仕方ありませんね。このまま進みましょう。」 《にゃー。》 《にゃ。》 ようやく階段まで辿り着く。 そして子供達を落とさないように慎重に階段を降りる事、数段。 2階の廊下から《にゃぁぁー!》と元気な鳴き声。 この朝から無駄にハイテンションな鳴き声は【ササノハ】 ・・・今、彼には一番見つかりたくなかった。
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