日常1 《黒猫亭の看板娘》

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・・・笑顔が怖い・・・。 ふふっ。懐かしいフレーズですね。 「私もゴローさんに会いたいな。会ってお礼を言いたいなぁ。」 ・・・あぁ。そう言えば志乃さんも・・・。 ふふ。偶然とは面白いものです。 「大丈夫です。志乃さんが【黒猫亭】で働く限り、必ず会えますよ。」 「それ、遠回しに世界一は自分の物だ!って宣言に聞こえるんですが?」 「宣言ではありません。確定事項です。」 「自意識過剰もそこまでいくと頼もしいですな。」 お皿にサラダとハムエッグを盛る。 小麦色に焼けたトーストにバターを一欠片。 バターの溶ける良い香りが辺りに充満していきます。 「はい。どうぞ。」 「あっ!ありがとう!クロさん!」 志乃さんは嬉しそうにパンと卵を口に頬張る。 その満足そうな表情は私の心に暖かさを満たしていく。 作り手の喜びとは相手の喜んでくれる表情。 これでこそ作りがいがあると言うものです。 「そう言えば最近、繁盛してるよね。」 唐突に変わる女性の会話。 女性と言うのはコロコロと話題を変えます。 しかも、大体が全然違う話。 あぁ、誤解しないでください。 私はこの話題の変化はかなり好ましい。 会話を変化させる事によって、様々な話を堪能出来ますからね。 まるで気まぐれな猫のように愛らしいと思います。 「えぇ。志乃さんにもそうですが、子供達にも悪いと思っています。フル回転で頑張ってくれていますからね。」 「ササノハなんて、閉店間際とか疲れた声で《ふにゃー。》って言ってるもんね。最初は異常にハイテンションだけど。」 「・・・志乃さん。猫の物真似上手いですね。ササノハそっくりです。」 「えぇ。得意技です。」
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