日常1 《黒猫亭の看板娘》

19/114
前へ
/613ページ
次へ
ーーー・・・。 神奈川県内にある保護センター。 老朽化したその建物には様々な動物達が殺されるのを待っています。 志乃さんの言った事は正解です。 私にもっと力があれば、ここにいる動物達を全て家族として迎えてあげられるのに。 しかし、財力的、体力的に不可能です。 私の身体は1つしかないのですから。 あぁ、何故、神は私に分身能力を授けてくれなかったのでしょうか? 次回、神に会ったら聞いてみましょう。 建物内に入り受け付けへ。 受け付けにいる女性職員が「あっ!クロさん!こんにちわ!」と元気に挨拶をしてくれます。 「はい。こんにちわ。」 「前に引き取ってくれた猫ちゃんはお元気ですか?」 「えぇ。元気過ぎて困っていますよ。無駄にテンションが高いのです。しかし・・・それが愛らしい。」 「それが愛らしい。」 ・・・。 「ぷっ。変わりませんね。クロさんは何だかんだ言って必ず最後に誉めるんだから。」 「・・・そうでしょうか?」 「それで?今日は?」 「えぇ。もう一匹、家族を増やそうかと思いまして。」 「えっ!?もう一匹って・・・6匹目?」 「はい。子供達や優秀なスタッフが頑張ってくれるので繁盛しているのです。」 「ほえー。景気の良い話ですね。今度、私もお邪魔しちゃおうかなぁ。」 「ええ。喜んで。その際はホットケーキをサービス致します。」 「えー。絶対に行きます!」 「お待ちしていますよ。」 「じゃ、いつも通りに書類を記入してください。クロさんなら特別にトライアル期間なしで大丈夫だと思います。」 「お試し期間なしですか?しかし、それは違法では?」 トライアル期間。 つまりは、お試し期間と言うものです。 保護センターから動物を引き取る際は書類、面談、トライアル期間は必須なのです。 1週間程度、動物を引き取り、暮らし、相性を確かめる為の期間。 世の中には里親になってすぐに動物を捨てる愚劣な人間もいるからです。 それを未然に防ぐために行う処置と言っても過言ではありません。 まぁ、実際にはそれでも捨てたり虐待する愚かなクズがいるのですがね。 もし、そんなクズがいたら発見次第八つ裂きに・・・おや、話がそれました。 「あはは。そうなんですけど。クロさんは実績が違いますから。上も特別視してるんですよ。」
/613ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5154人が本棚に入れています
本棚に追加