5154人が本棚に入れています
本棚に追加
特別扱いは好きではありませんが、私は一度選んだ家族を手放しません。
ですからトライアル期間は正直いらないと感じていました。
ですから、この特別扱いを丁重にお受け致しましょう。
そもそも、これから家族となる者にお試し期間など失礼にも程がありますし。
「ありがとうございます。」
「あ、でも内緒ですよー?」
「勿論です。」
「クロさんが約束してくれるなら安心です。」
女性職員さん・・・確か、名前は尾野さん。
ちょっと自信がないですが・・・後でこっそり名札を確認しましょう。
尾野さん(仮名)に連れられケージに囚われた猫達を一匹、一匹眺める。
人懐こく私を見た瞬間に寄ってくる子、臆病でケージの隅に震えて丸まる子、敵対心を露にし私に威嚇をしてくる子と色んな子達がいます。
正直、みんな家族として迎えたい。
みんなを引き取り、自由にしてあげたい。
もっと私に力があれば・・・。
・・・私は情けない。
「・・・ロ・・・さん?」
「・・・。」
「・・・ロさん?クロさん!?」
・・・!?
「あ、すいません。少し考え事を。」
「・・・無理ですよ?」
「はい?」
「全員を助けるなんて不可能です。」
「・・・はい。」
「でも、少なくとも一匹は確実に助かります。」
「・・・。」
「クロさん。クロさんは優しすぎます。そして欲張りです。全員じゃないけど・・・すでにクロさんに引き取られた5匹、それに今回の1匹。全員で6匹もの命を救ったんですよ?胸を張るならまだしも、そんなに悲しい顔してちゃ新しい家族も嫌がりますよ?」
「・・・申し訳ありません。」
「はい!では次の・・・【ガタン!】」
・・・?
物音?その物音は動物達のいる部屋ではなく、今は倉庫として使われている部屋から聞こえました。まぁ倉庫と言えば聞こえは良いですが、実際は不必要な物をしまうガラクタ部屋です。
「・・・珍しいですね?あの部屋に人がいるなんて。」
「あ、いや~。中にいるのは人じゃないんですよ。」
最初のコメントを投稿しよう!