日常1 《黒猫亭の看板娘》

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ーーー・・・。 彼女がヨロヨロと立てるようになったのは、この場所に来てから3日目の朝。 傷はそれほど深くはないが、出血と疲労が彼女の回復を遅らせていた。 3日間の間、彼女は老夫婦に少し慣れていた。 相変わらずの老夫婦と彼女の間には距離があったが、彼女が老婆に威嚇する事もなくなった。 しかし、飼い猫のように甘えるか?と聞かれればそうでもない。 老夫婦と彼女の関係はあくまで気の抜けない隣人と言ったものだ。 まぁ、気が抜けないと感じているのは彼女のみであるが。 当の老夫婦、特に老婆は距離を保ちながらも彼女と仲良くしたいようである。 彼女は思う。 ・・・油断は出来ないが、2人は敵ではないようだ。 ・・・食事に暖かい寝床をくれる。 ・・・傷が完治するまではおとなしくしていよう。 【はい。猫ちゃん。ご飯ですよ~。】 ん。食事か・・・!? なんだ!?食事を乗せていた土台が変な色だ!しかも、形が違う! 猫用の黄色の皿に彼女は興味津々で触れる。 こんな色は外ではあまり見ない。 用心深い彼女にとっては、それだけで警戒する対象だった。 【可愛いでしょう?思わず買ってしまったの。猫ちゃんに似合うかなと思って。】 《お、おい!いつもの白い平べったい土台はどうした!?》 【あら、喜んでくれるのね。買って良かったわ~。】 《おい!行くな!こ、これは大丈夫なのか!?お日様色だぞ!?おいっ!・・・行ってしまった。》 彼女は警戒しながらも空腹を満たす為に食事を口に運ぶ。 ・・・どうやら害はないようだ。 彼女は黄色の皿に害がない事が分かると、今度は安心して食事を運んだ。 《・・・この土台。食事が飛び散らなくて食べやすいな・・・。》
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