日常1 《黒猫亭の看板娘》

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彼女は恐る恐る私の膝に乗り上げると、ゆっくりと腰を降ろしました。 「少し我慢してください。」 ハンカチで体表についた血液を拭き、軟膏を傷に塗布する。 幸い怪我は大した事がないようです。 私の特製軟膏によって流血もピタリと止まりました。 「貴女はもう少し自重した方が良い。そんなに血塗れでは美人が台無しですよ?」 《みぁー。みぁー。》 「・・・では行きますか?」 《みぁ?》 「私には貴女の言葉が理解出来ません。しかし、必死さは分かります。私が貴女を出して差し上げましょう。」 《みぁー。》 「とりあえず、保護センターを出るまでは大人しくしていてください。暴れては尾野さん(仮名)に連れ戻されてしまいますよ?」 《みぁー。》 ・・・ふむ。 彼女はとても利口ですね。 私が彼女の言葉を理解出来ないように、彼女も私の言葉を理解出来ないのに・・・まるで理解したように大人しくなりました。 私は彼女を腕に抱くと、倉庫を後にします。 倉庫から出ると目の前に尾野さん(仮名)の姿。 「あっ!クロさん!探しましたよ!ここで待っててくださいって言ったのに!」 「いや、廊下のど真ん中で待てとか・・・あまりに私を粗末に扱いすぎでは?」 「うわっ!?ちょっと!?その猫ちゃん、どうしたんですか!?普通に大人しい!!」 「・・・私の話を聞い・・・」 「うわー。凄い!凄い!あんなに暴れてたのに!!クロさん、どうやって飼い慣らしたんですか!?」 「・・・。」 「あ!何か言いました!?」 「・・・いえ。」
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