5154人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女は恐る恐る私の膝に乗り上げると、ゆっくりと腰を降ろしました。
「少し我慢してください。」
ハンカチで体表についた血液を拭き、軟膏を傷に塗布する。
幸い怪我は大した事がないようです。
私の特製軟膏によって流血もピタリと止まりました。
「貴女はもう少し自重した方が良い。そんなに血塗れでは美人が台無しですよ?」
《みぁー。みぁー。》
「・・・では行きますか?」
《みぁ?》
「私には貴女の言葉が理解出来ません。しかし、必死さは分かります。私が貴女を出して差し上げましょう。」
《みぁー。》
「とりあえず、保護センターを出るまでは大人しくしていてください。暴れては尾野さん(仮名)に連れ戻されてしまいますよ?」
《みぁー。》
・・・ふむ。
彼女はとても利口ですね。
私が彼女の言葉を理解出来ないように、彼女も私の言葉を理解出来ないのに・・・まるで理解したように大人しくなりました。
私は彼女を腕に抱くと、倉庫を後にします。
倉庫から出ると目の前に尾野さん(仮名)の姿。
「あっ!クロさん!探しましたよ!ここで待っててくださいって言ったのに!」
「いや、廊下のど真ん中で待てとか・・・あまりに私を粗末に扱いすぎでは?」
「うわっ!?ちょっと!?その猫ちゃん、どうしたんですか!?普通に大人しい!!」
「・・・私の話を聞い・・・」
「うわー。凄い!凄い!あんなに暴れてたのに!!クロさん、どうやって飼い慣らしたんですか!?」
「・・・。」
「あ!何か言いました!?」
「・・・いえ。」
最初のコメントを投稿しよう!