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ーーー・・・。
【ミアちゃん。ご飯よー。】
《ありがとう。お婆ちゃん。》
老婆はミア専用のお皿に食事を乗せ運ぶ。
老婆は嬉しそうに笑い、ミアはその老婆の笑顔が好きだった。
【ミア。日向ぼっこをせんか?】
老人は自分の膝を【トン、トン。】と2回叩く。
そのジェスチャーの意味をミアは理解していた。
そしてミア自身も老人の膝の上がお気に入りだった。
老人と縁側で桜を眺める。
まだ少し葉っぱが出た程度だが、不思議と飽きない。
ミアは老人と過ごす時間が好きだった。
ミアがこの老夫婦の家に住み着いて時間が流れた。
休眠していた桜はゆっくりと葉を出し、日射しも少しずつ暖かいものに変わっていた。
今ではミアは完全に老夫婦の家族となっていた。
非日常が日常に、独りが家族に、ミアはこれまでにない幸福に包まれていた。
そして老夫婦もまた幸福だった。
老夫婦は泣いていた。
老婆は娘を強く産んであげられなかったと。
老人は泣いていた。
自分の娘に何も出来なかったと。
それを変えたのはミア。
ミアの優しさが、2人を後悔の念から立ち直らせたのだ。
そして、老夫婦はミアを自分の娘の生まれ変わりのように可愛がった。
ミアもまた、初めて出来た自分の居場所に・・・家族に若干の照れ臭さを感じながらも2人を大切に思っていた。
老婆は笑う。
新しい娘が出来た事を。
老人は笑う。
娘に出来なかった事をしてやりたいと。
ミアは笑う。
暖かい居場所がある事を。
しかし、そんな幸せは長くは続かなかった。
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