日常1 《黒猫亭の看板娘》

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ーーー・・・。 【ミアちゃん。ご飯よー。】 《ありがとう。お婆ちゃん。》 老婆はミア専用のお皿に食事を乗せ運ぶ。 老婆は嬉しそうに笑い、ミアはその老婆の笑顔が好きだった。 【ミア。日向ぼっこをせんか?】 老人は自分の膝を【トン、トン。】と2回叩く。 そのジェスチャーの意味をミアは理解していた。 そしてミア自身も老人の膝の上がお気に入りだった。 老人と縁側で桜を眺める。 まだ少し葉っぱが出た程度だが、不思議と飽きない。 ミアは老人と過ごす時間が好きだった。 ミアがこの老夫婦の家に住み着いて時間が流れた。 休眠していた桜はゆっくりと葉を出し、日射しも少しずつ暖かいものに変わっていた。 今ではミアは完全に老夫婦の家族となっていた。 非日常が日常に、独りが家族に、ミアはこれまでにない幸福に包まれていた。 そして老夫婦もまた幸福だった。 老夫婦は泣いていた。 老婆は娘を強く産んであげられなかったと。 老人は泣いていた。 自分の娘に何も出来なかったと。 それを変えたのはミア。 ミアの優しさが、2人を後悔の念から立ち直らせたのだ。 そして、老夫婦はミアを自分の娘の生まれ変わりのように可愛がった。 ミアもまた、初めて出来た自分の居場所に・・・家族に若干の照れ臭さを感じながらも2人を大切に思っていた。 老婆は笑う。 新しい娘が出来た事を。 老人は笑う。 娘に出来なかった事をしてやりたいと。 ミアは笑う。 暖かい居場所がある事を。 しかし、そんな幸せは長くは続かなかった。
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