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それから老夫婦の外出には必ずミアがいた。
彼女には使命感があった。
必ず2人を護ると・・・。
塀の上にカラスがいれば勢い良く飛び出し追い払う。
他人の飼い犬が老夫婦に吠えればミアも負けじと唸る。
老夫婦にはそれが遊びに見えてしまっていたのだが、ミアにとってはそうではなかった。
商店街の魚屋が老婆に声をかける。
【お!買い物かい!?倉持の婆さん!今日も一緒だな!ミアちゃん!】
《おじさん!お婆ちゃんにサービスしてくれ!》
【お!可愛いな!じゃあ、ミアちゃんにメザシあげちゃう!】
《ちがっ!?私じゃなくて、お婆ちゃんに!》
商店街の八百屋が老婆に声をかける。
【やぁ、倉持さん!今日は何にします!?お、ミアちゃんもいるねー!】
《おじさん!お婆ちゃんに渡す野菜は半分だ!重いからな!》
【おー。ミアちゃんはいつも元気だ!じゃあリンゴをサービスしちゃおう!】
【ありがとう。八百屋さん。ミア、後ですりおろしてあげるからね。】
《ありがとう!おじさん!》
買い物も一通り終え、帰り道。
ミアは気付かなかった。
いつもと帰り道が違う事に・・・。
老婆に神経を向けていた為に気付かなかったのだ。
いや、老夫婦との暖かい生活がミアの神経を、集中力を削ったのかも知れない。
運悪く、その日はいつもの帰り道が下水工事の為に封鎖されていたのだ。
近隣住民には工事開始の説明がチラシとして配布されていた。
商店街に行く時はまだ工事は始まっていなかった。
しかし、買い物を終えた今の時間は丁度、工事中である。
だから老婆は行きはいつも通りの道、帰りは回り道で帰ろうと考えていた。
ミアにとっては、これも不運だったと言える。
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