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今度は以前に子供を助けた時とは違う。
車は断然に速い速度だったし、体当たりする相手は大人だ。
もしかしたら、ミアの全力でも老婆はびくともせずに最悪2人共車に轢かれ死んでしまうかも知れない。
ミアの脳裏に道路に無惨に横たわる同族の姿が浮かぶ。
その姿が、恐怖が自分を縛る。
・・・恐い。
私はあんな死に方は嫌だ。
嫌だ・・・嫌だ、嫌だ、嫌だ!!
一瞬、足を止めてしまいそうになる
でも次に脳裏に浮かんだのは・・・
【儂は・・・何もしてやれなかったのぅ。】
桜を眺めながら震える老人の姿。
その姿をミアは二度と見たくないと思った。
もし老婆に何かあれば?
老婆が写真になり、桜になってしまったら?
老人は?
・・・また独りで震えるのか?
・・・背中を丸めながら・・?
・・・嫌だ・・・。
ミアの足に更に力が入る。
・・・嫌だ・・・。
ミアの恐怖が瞬時に消え去る。
《あんな姿を見るくらいなら・・・私は・・・私はぁぁぁーっ!!》
迫ってくる鋼鉄の塊に臆する事無く、ミアは全力で老婆に向かって突進した。
・・・【ドン!】
ミアは思い切り老婆に体当たりをした。
老婆はゆっくりとバランスを崩し、車道の外から倒れ出て行く。
ミアは《よし!》と思い歓喜した。
しかし同時に変だとも思う。
何故なら老婆はミアが体当たりする前から、ゆっくりと倒れようとしていたように見えたからだ。
すでに力無く・・・。
糸の切れた人形のように・・・。
ミアの予想が確信に変わったのは老婆が歩道に倒れ、車道を猛スピードで車が通り過ぎた後。
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