日常1 《黒猫亭の看板娘》

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《お婆ちゃん!?》 ミアは急いで体勢を立て直すと老婆に走り寄る。 《お婆ちゃん!!大丈夫!?》 「・・・。」 ミアは倒れる老婆に必死に声をかけた。 しかし、老婆は返事どころか動く気配もない。 《ねぇ!!お婆ちゃん!!お婆ちゃん!!》 ミアは手でゆっくりと老婆の顔を叩く。 まるで寝ている老婆を起こそうとしているように。 しかし、その声は虚しく響くだけだった。 老婆はその声に反応する事なく、目を閉じていた。 《お婆ちゃん!お婆・・・。》 【・・・無駄ですよ。】 ・・・!? ミアは驚愕した。 ・・・いなかった。 さっきまで確かに誰もいなかったのだ。 しかし、自分のすぐ後ろから声がする。 ミアの身体は硬直する。 それはまるで、身体に茨が巻き付いたようにミアの動きを固く封じる。 【その老婆は寿命です。そこに倒れるは脱け殻。】 次に声が聞こえた時、ミアの意識は現実に戻り急いで身体を声のする方に向けた。 だが、その姿を見た時ミアは再び固まってしまう。 後ろにいたのは人間。 パッと見た感じは人間なのだ。 しかし、違うのは背中に生えた大きな翼に、身に纏う空気。 白いスーツを身に纏ったその人物は興味無さそうにミアを一瞥する。 【猫さん。あなたの飼い主は死んだのです。死因は脳梗塞。あなたがいくら頑張って救おうとしても寿命は変わらないのです。】 《お、お婆ちゃんに何をした!?》 【しかし、あなたのした事は立派です。】 《お・・・お婆ちゃんを起こせ!》 【まさか、車の前に飛び出すとはね・・・。】
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