5154人が本棚に入れています
本棚に追加
《お、お婆ちゃんを・・・。》
【・・・何をさっきから鳴いているのか分かりません。と言うか私も何故、猫に話しかけているのでしょう?次の魂を回収せねば。】
白いスーツ姿の人物はそう呟くと、まるで霧のように姿をスーッと消す。
その姿に焦り、人物がいた場所に駆け寄るミア。
《ど、何処に!?何処に行ったんだ!?ま、待ってくれ!お婆ちゃんを!!お婆ちゃんを!!》
叫び、辺りを見回すが先程の人物の姿は影も形も見つからなかった。
最初からそこには誰も存在しなかったように、空気ごと消えていたのだ。
そして・・・
【ば、婆さん!?婆さん!!】
道の奥から聞こえる大好きな人の声。
何で、家にいるはずの老人がこんな所に?そう疑問に思いながらも、ミアはその大好きな声に緊張を解き老人に駆け寄ろうとした。
だが・・・
・・・【きゃぁぁぁ!野良猫にうちの娘が襲われてる!誰かーっ!】
次の瞬間に脳裏を横切ったのは、いつぞやの母親の姿。
凄い剣幕と叫び声が脳内で繰り返しリピートされる。その状況が、空気が今の自分とゆっくりと重なっていくのだ。
【婆さん!!婆さぁぁぁん】
ミアは恐くなった。
また、自分のせいになるのではないか?
助けたつもりが、そうではなかったのではないか?
大丈夫。
老人ならば分かってくれる。
そう頭では分かっていても、身体が・・・心が叫ぶ。
・・・もし老人にまで攻められたら・・・私は・・・もう。
ミアは何より老夫婦の悲しい顔が大嫌いだった。
そして老夫婦に嫌われるのを心底苦痛だと思った。
ミアはゆっくりと後退りをした。
老人は【婆さん!ミアぁぁぁ!】とミアの名前も呼んでいるが、恐怖に支配されたミアには届かない。
そしてミアは・・・
【あっ!?何処に行くんじゃ!?ミア!?ミアぁぁぁ!】
・・・逃げ出した。
《私じゃない!私じゃないんだ!嫌わないで!!私を嫌わないでぇ!!ごめんなさい!ちゃんと助けられなくて・・・ごめんなさいぃぃ!!》
老人に嫌われる恐怖にミアは堪えきれなかった。
護ると決めた老婆を助けられなかった。
ミアは全てを失ったような悲壮感に包まれてしまった。
・・・だから、ミアは走る。
・・・宛も無く。
・・・とにかく今は老人から離れたかったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!