日常1 《黒猫亭の看板娘》

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《お、お婆ちゃんを・・・。》 【・・・何をさっきから鳴いているのか分かりません。と言うか私も何故、猫に話しかけているのでしょう?次の魂を回収せねば。】 白いスーツ姿の人物はそう呟くと、まるで霧のように姿をスーッと消す。 その姿に焦り、人物がいた場所に駆け寄るミア。 《ど、何処に!?何処に行ったんだ!?ま、待ってくれ!お婆ちゃんを!!お婆ちゃんを!!》 叫び、辺りを見回すが先程の人物の姿は影も形も見つからなかった。 最初からそこには誰も存在しなかったように、空気ごと消えていたのだ。 そして・・・ 【ば、婆さん!?婆さん!!】 道の奥から聞こえる大好きな人の声。 何で、家にいるはずの老人がこんな所に?そう疑問に思いながらも、ミアはその大好きな声に緊張を解き老人に駆け寄ろうとした。 だが・・・ ・・・【きゃぁぁぁ!野良猫にうちの娘が襲われてる!誰かーっ!】 次の瞬間に脳裏を横切ったのは、いつぞやの母親の姿。 凄い剣幕と叫び声が脳内で繰り返しリピートされる。その状況が、空気が今の自分とゆっくりと重なっていくのだ。 【婆さん!!婆さぁぁぁん】 ミアは恐くなった。 また、自分のせいになるのではないか? 助けたつもりが、そうではなかったのではないか? 大丈夫。 老人ならば分かってくれる。 そう頭では分かっていても、身体が・・・心が叫ぶ。 ・・・もし老人にまで攻められたら・・・私は・・・もう。 ミアは何より老夫婦の悲しい顔が大嫌いだった。 そして老夫婦に嫌われるのを心底苦痛だと思った。 ミアはゆっくりと後退りをした。 老人は【婆さん!ミアぁぁぁ!】とミアの名前も呼んでいるが、恐怖に支配されたミアには届かない。 そしてミアは・・・ 【あっ!?何処に行くんじゃ!?ミア!?ミアぁぁぁ!】 ・・・逃げ出した。 《私じゃない!私じゃないんだ!嫌わないで!!私を嫌わないでぇ!!ごめんなさい!ちゃんと助けられなくて・・・ごめんなさいぃぃ!!》 老人に嫌われる恐怖にミアは堪えきれなかった。 護ると決めた老婆を助けられなかった。 ミアは全てを失ったような悲壮感に包まれてしまった。 ・・・だから、ミアは走る。 ・・・宛も無く。 ・・・とにかく今は老人から離れたかったのだ。
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