日常3 《ヤンキーと少女とお弁当》

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「あ、あんにゃろぉぉぉぉぉぅ!」 二階堂が悔しそうに歯をガタガタと震わせる。 「ふひほ!ひほ!ひほ!」 二階堂のその姿を確認し、意味不明な奇声にも似た笑い声で二階堂を煽るトト。 そして・・・。 【ツカツカツカ・・・。】 一転の曇りもない同じタイミングで歩くクロ。クロはレジの横に向かうと、ジロリとトトを見下ろした。 そして無言でトトとケーキを見比べると、 「給料から天引きですね。それに接客中は食べるのを止めなさい・・・死ね。常識でしょう?・・・ボケが。いくら脳ミソが角砂糖1つ分しかないからって、そんな事も分からないのですか?・・・クズ。それから今日の君のデザートはなしです・・・爆発しろ。」 と呟く。 呟いたはずなのだが、その声の圧力は凄く、トトも一瞬顔をひきつらせた。 「あ、あのぅ・・・要所、要所に暴言をねじ込むの止めてもらえませんかねぇ。あ、あと・・・今日のデザートって・・・。」 「今日のデザートはザッハトルテに自家製アイスです。紅茶はアールグレイ。ちなみにザッハトルテは自信作です。」 「に、にやぁぁぁぁぁぁ!?ご、ごめんなさいぃぃぃ!ちゃんとやりますぅ!やりますからデザートっ!!デザートだけはぁぁぁぁ!!」 「・・・そうですね。私も鬼ではありません。元死神ですが・・・。これからの頑張り次第で検討しましょう。」 「け、検討とはぁ?」 「よく頑張ったで賞・・・デザート。まぁまぁで賞・・・ハバネロ。明日辺りに家が火事になるで賞・・・水道水。を差し上げます。」 「ちょ、ちょっと待ってくださぃ!3つの内の2つがご褒美じゃないですよねぃ!?最後の火事なんてやりますよね!?クロさんが私の家に火をつけるやつですよねぃ!?しかも水道水で消せって意味ですかぁ!?」 「・・・ふっ。」 「あっ!?ちょっと!?何ですか!?その含み笑いっ!!あ、行かないで!まだ話は・・・。ぬっ・・・ぬぁぁぁぁ!頑張るしかないですよぅ!!さもないとデザートと私のお菓子部屋がぁぁぁぁ!唸れっ!私の指先っ!!」 トトは鬼の形相でレジに向かうと異常なまでの手捌きで次々と会計を行った。時間があれば清掃まで始める始末。 軽くさっきの2倍速である。 そして、そのやり取りを見ていた二階堂は・・・「し、師匠だけは怒らせないようにしよう。」と固く心に誓ったのだった。
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