日常3 《ヤンキーと少女とお弁当》

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店が落ち着いたのは16時過ぎ。 賑わっていた店内も今はゆっくりとした空気が流れている。 店内では猫と戯れる客達。 クロは【カチャカチャ。】と皿を洗い、トトはご褒美のデザートを満面の笑みで頬張る。 そして二階堂は死人のように空いているテーブルに突っ伏している。 「ま、マジかよ・・・。ハード過ぎるぜ。」 「ご苦労様です。」 「・・・あ。お疲れ様っす。」 突っ伏している二階堂の傍らに【コトリ】とコーヒーを置くクロ。 そしてクロは二階堂に向かい合うように席に座った。 ・・・改めて見ると・・・師匠って顔こえぇよな。肌とか映画に出てくる化け物みたいな青白さじゃねぇか。 「先程は助かりました。改めて自己紹介しましょう。私はクロ。この店のオーナー兼店長兼料理人兼ウェイターです。」 ・・・兼任し過ぎだろ。 「あ、押忍。自分は二階堂 春人っす。よろしくお願いします。」 二階堂はしっかりと頭を下げ挨拶すると、クロが持ってきてくれたコーヒーに口をつけた。 「・・・!?う、うめぇ!!」 「ふふ。ありがとうございます。さて、二階堂君。君には明日の午前中から働いてもらいます。時給は600円。空いた時間で君に料理を教えます。まかない付き。休憩時間あり。週5日勤務で有給は10日です。制服は貸し出し致します。」 「・・・は!?ゆ、有給あるんスか!?俺、バイトっスよ!?」 「当たり前でしょう?有給は権利です。その代わり自覚ある勤務態度を。無断欠勤、無断遅刻は許しません。以上です。」 「・・・は?いや、以上っスか?あの髪型とか・・・何も言わないんスか?」 「そうですね・・・料理をする時は髪が入らないように注意してください。」 「い、いや。もっと・・・髪切れとか染めろとか・・・。」 「・・・?何故です?」 「いや、だってよ。」 「金髪ですか?地毛が金髪の方も地球上に存在していますが?」 今までの経験上、働く際に必ずと言っていい程、二階堂は身支度を責められた。 現にそれで面接などには、ほとんど受かった事はない。 しかし、クロは二階堂の身なりを全く注意しない。 いや、二階堂にとっては有り難い事なのだが・・・あまりの呆気なさに肩透かしをくらったのも事実だった。 「・・・そ、そっすよね。」
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