日常3 《ヤンキーと少女とお弁当》

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「・・・では始めましょうか?」 「・・・は?な、何を・・・っスか?」 クロは不思議そうに二階堂を見下ろすと「決まっているではないですか。」と呟く。 「二階堂君。君は私に料理を教わりに来たのでしょう?ゲテモノでもなく、美味しい料理を。」 「あのー。すいませぇん?ゲテモノってぇ~私の考案したトトちゃんスペシャルのぉ~・・・。」 「ゲテモノの親玉は黙っていなさい。さぁ、まずはエプロンをしなさい。」 「お、押忍!」 二階堂はクロに手渡されたエプロンをイソイソと着ける。 そしてクロと共にキッチンに行くと、ソワソワとクロの出方を伺った。 ・・・こんだけ繁盛してる店のオーナーだ。きっと修行も鬼のように厳しいに違いねぇ! 【ゴクリ】と二階堂は唾を飲み込むと、神妙な面持ちでクロを見つめる。 しかし・・・クロから出た言葉は意外な言葉だった。 「はい。では、まず手を洗いましょう。特に夏場は食物が痛みやすい。雑菌を防ぐ為にも手は清潔に。」 「お、押忍。」 「さて、包丁の使い方ですが・・・。まぁ、適当に。切れれば良いです。」 「・・・は?」 「今日のメニューはチャーハンにしましょう。丁度、冷やご飯がありますし。」 「お?押忍。」 ・・・これには二階堂も肩透かしをくらった。 何故なら、テレビなどで見る料理人の弟子入りとは、それはとてつもなく厳しい。だからこそ、自分は覚悟をして来たのだ。 しかし実際は・・・。 「良いですか?チャーハンはパラパラ・・・と言うイメージですが、それで決めつけるのは・・・。」 ・・・まるで緩い。 さながら昼過ぎの料理教室のような和やかな雰囲気。 しかもメニューはチャーハンである。 何とかの何とか風・・・でも、何とかを添えて・・・でもなく、そこらで食べる事の出来るチャーハンである。
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