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彼の再会
虫の音が聞こえる。
窓からの光が眩しかった。いつものように寝ていたらしい。
「おはよう、君は元気かな」
ベッドの横に黒犬が行儀良くおすわりしていた。
黒のプードル。
「何処から入った?」
黒犬の目を見るが、当然に犬の表情は分からない。
「私が人の言葉を、話していることに、君は驚かないのだな。」
黒犬はピンク色の舌をちらりと出す。
「お前が話そうが、俺の頭が可笑しくなって幻覚を見ていようがどうでもいい。俺は寝る。」
とにかく、眠い。
再び横になると、布団を被る。
「私は戸が開いていたので、ここが空き家だと考えていたのだが、もう一晩泊まる事を許して貰えないだろうか?」
幻覚は消えてくれそうにないようだった。
しかし、眠い。
眠りたい。
「しかし昨晩は寒い夜だった。泊めて貰えて、とても感謝している。有難う。」
「うるさいっ!静かにしろっ、このばか犬っ!!」
枕を黒犬に投げつけるが、伏せて避ける。
俺には黒犬は涼しい顔をしているように見えた。
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