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「明日だっけ?帰国」
高々と並ぶ高層ビル。その合間を縫って立つ今にも崩れそうな家々。ここはアメリカのダウンタウン。気をつけなければ身包みはがされるだろうこの場所に不釣り合いだろう半分だけのバスケットコートがある。そのコートの中、背の高く神々しいほど金髪を短く刈り上げたアメリカ特有の黒色の肌の少年が立っていた。その風貌に似合わない流暢な日本語で話す彼の隣には一人の少年が立っている
「あぁ」
ただそれだけ呟いたのは少年はおそらくアジア系だろう。髪型はわからないが黄色の肌。背は黒人の彼と頭一個分違うだろう。深く被った帽子に臆することなく指先でボールを回している。黒人の方とは違う外国人が覚えたのとはまた違う流暢な日本語から日本人だと想像するのに時間はかからないだろう
「寂しくなるな」
日本人だろう少年は呟く。アメリカでの生活は彼にとっていいものだったということに違いない
「またこいよ。その時までにうまくなってるさ」
黒人の彼もボールを指でまわす。
「アイツと一緒にいれば嫌でも戻ってくる」
日本人はボールを黒人に投げ渡すと一度帽子をとり再びかぶり直した
「そりゃそうだ。それでそん時は多分敵同士」
「まず間違いなくそうだろうな」
2人の会話が近くを通る戦闘機の激しい音にかき消される。一瞬視線を戦闘機に取られる。視線をコートに戻した時、男達はそこにはいなかった
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