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「感傷に浸ってないでさっさと中入れ」
2人が乗ってきた車の運転席から中年の男が地に足をつける。すでに中年の域に達しているだろうがその体つきは中年のそれとは違いがっちりとして引き締まっている。なにかスポーツをやっていたのは間違いないだろう
「誠、鍵」
中年男がそういうと車を先に降りた背の低い方の少年──誠が玄関へと続く門から顔を出した
「親父、早く開けてくれっと」
誠が言い切る前に中年男は誠に向かい鍵を投げてよこした。誠はそれをキャッチすると再び玄関に足を向け鍵を開けた。ゆっくりと玄関を開ける
「うわー、変わんねぇ」
中に入るなり誠が声を漏らす。2年という長い間住んでなかったとはいえそれまでは当たり前のように住んでいた家だ。懐かしむのも当然といえる。しかし誠に入り口を遮られたもう1人の少年にとってはいい迷惑だろう
「誠、早く中入れよ。荷物重いんだから」
「あっ武蔵わりぃ」
我慢しきれなかったんだろう武蔵の言葉に誠は靴を脱ぎリビングの方へと入っていく。武蔵もその後に続いた
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