10人が本棚に入れています
本棚に追加
「…なんで逃げないの?」
しばらく黙っていた彼女だったが、そこから動かない華乃に疑問を持ったのか、腕と帽子の隙間から華乃を見ている。
「もう、逃げられないよっ…。体…動かない…」
息が続かない所為か、ところどころ詰まらせながら言葉を吐き出す。
彼女は顔を埋めながら話しかけてきた。
「お姉さんだけ殺しても、意味ないんだよ…」
薄れかけてきた意識が邪魔しながらも、必死に彼女の言葉を聞き入れる。
何か言いたいのだが、そろそろ辛くなってきたのか、出たのは掠れた声だけで彼女には届かなかった。
「みんな、死んじゃえばいいんだっ…」
涙ながらに聞こえてきたその言葉を最後に、華乃の意識は途絶えた。
最初のコメントを投稿しよう!