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それでも頭の中に入ってくる記憶に、拒否とも取れる涙が溢れてくる。
「やだっ…、やだよ、たっくん…!!」
足がもつれそうになりながら家まで来ると、勢いよくドアを開けて中に入った。
華乃はすぐにそれを閉めて、誰も来ないように鍵をかける。
「うっ…、うあぁぁあっ…!!」
悲鳴に近い泣き声をあげると、崩れるようにその場にペタリと座り込む。
走っている間に華乃は、海斗や銀が言ったことも記憶が間違いではないことも、ちゃんとわかっていた。
けれど、彼女が受け入れるにはまだ早すぎて。
「た…くん、たっ…く、ん!」
そこにいない彼の名前を嗚咽混じりに何度も繰り返す。
無駄なことだとわかっていても、今の華乃にはそれしか出来なかった。
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