経験者

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女性が路上で気を失ってからどれくらいの時間が経っただろうか。 彼女が目を覚ますと、ぼやける視界に段々と見知らぬ天井が見えてきた。 (……ここは…?) 横になっていたソファーベットからゆっくりと起き上がると、そこはどこかの建物の一室で、薄暗い部屋には外の光が若干差し込んでいた。 「目、覚めました?」 ふと男性の声がする。 女性が振り返るとそこには短髪でパーカーを着た、自分と同じくらいの年の、ごく平凡な男が椅子に座っていた。 だが彼女は気付いていた。 路上で混乱し、気を失い掛けて化け物に襲われそうになった時、救ってくれたのがこの男性だと。 男性は椅子から立ち上がり、女性に近付いてくる。 『俺の名前は藤村直樹。あなたは?』 直樹はそう言って彼女に飲み物を差し出した。
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