経験者

5/22
前へ
/71ページ
次へ
直樹はそう言って急に立ち上がり、身支度を整え始めた。 過去の経験から使えそうな道具を一式リュックに詰め、鉄バットを手に持った。 『あの、どうするんですか?』 沙恵は直樹に言う。 「さっきラジオで全国に軍を送ったって話しがあった。俺はそれに賭けるよ。」 直樹は沙恵の目を真っ直ぐに見て言った。 沙恵は動けずにいる。 無理もない。 沙恵はこの様なバイオハザードの経験は無く、この世のものとは思えない恐ろしい体験をしたばかりだ。 それに何故直樹が本当か定かでもないラジオの情報に賭けるのか?軍に信頼出来る知り合いでもいるのか? そう疑問に思った。 そしてオドオドしている沙恵に直樹は近付き、言った。 「ここにずっといても助かる見込みなんてない。一緒に付いてきて欲しい。なるべく俺から離れずに。」 沙恵はしばらく俯きながら考えたが、直樹の言葉を信じ、外に出る決意をした。 実際に自分のピンチを救ってくれた実力があったからである。 直樹は微笑み、後ろを振り返って部屋のドアを開けた。 「守ろう。今度こそ…」 直樹は部屋を出る際、小声で一言そう呟いた。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

168人が本棚に入れています
本棚に追加