プロローグ

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 子供の頃、僕はその日をただ大人がちやほやしてくれる日だと思っていた。ケーキを食べてプレゼントを貰える日だと、思い込んでいた。  今もその気持ちは変わらない。しかし、歳が一つ増えたことについて、それなりに感慨深さを感じるようになったのだ。いつもはしない、特別なことをするぐらいには。  ゆえに星座占い。結果無意味。  そうして、今日も今日とて、僕はいつものように屋上へ向かい、日常への回帰を企んだ。  校内唯一の侵入禁止箇所に指定されている屋上に潜り込むことは、県下でも有数の進学校とされている我が秀奉学園とって、最大のタブーとされているが、こと僕に至ってはそれは例外だ。というか、どちらかというとその逆だ。  この場所は、僕が惰眠を貪るために存在する、僕だけのテリトリーである。
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