最 終 章:凛として

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【今日、私は、きっと死ぬ。 地を這ってでも生きてやるって言ったのにそんなこと書き綴ってるって君が知ったらきっと目を三角にして怒るんだろうね。 あぁ、怖い怖い】 喧嘩売ってんのかぁぁぁ!! 真面目なの最初の一行だけじゃない! 破いてやろうかと思ったけど、初老の男性がまだ隣で私が全て読み終わるのを待ってくれてるからそれを必死で堪える。 【でもさ、怒ってもいいよ。 現在の君との約束より、未来の君の幸せを取ったんだから】 ……いきなり真面目にならないでよ、馬鹿。 だが、目線を隣の行にずらすと涙腺が緩んでしまった自分を恨んだ。 【まぁ、私はどこかの馬鹿凛とは違って万事において完璧だから、きっとこの損失を嘆いて多くの志士が決起するだろうね。 桂さんも、晋作も……】 ……相変わらず憎たらしい奴だな。 性格さえ良ければ間違ってはいないだろうよ、性格さえ良・け・れ・ば! 【それから、君も】 ……私? 【ねぇ、凛。 さっき私が書いた言葉が悔しいならさ、君が万事に完璧な人間になってみせなよ。 私は新しい時代のために散ろう。 けど君は新しい時代のために生きて】 新しい時代……。 稔麿が身を賭してまで目指した新しい時代は――きっとこんな世界じゃない。 【愛してる。 ずっとずっと君だけを】 私も、と空に答えてみた。 返事は、もちろんない。 「手紙、ありがとうございました」 泣き笑いで、読み終わるのを待ってくれていた初老の男性に深々と礼をすると空を仰いだ。 「私、新しい時代のために生きてみます」 それがあなたの願いなら。 どこまでも広がる蒼い空に誓う。 あなたのために私は生きよう、と。 いつか――凛としてあなたに会えるように。    【凛として-本編-完】
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