第三章:殴ってもいいですか?

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ここはどこだろうか。 目が覚めた私はほんの少しだけ目を開けて辺りの様子を窺っていた。 どうやら私は殺風景などことも知れぬ部屋の窓際に寝かされているようだ。 ご丁寧に布団まで掛けられている。 「……で、この子、どうしたんです?」 「……晋作が連れてきた」 部屋の真ん中から何やら二人の男の会話が聞こえた。 あ、もしかしてさっきまでの松陰さんとの会話は夢でこれが現実? てことは池田屋跡で私は倒れてて誰かに助けられたとか……? 私は何か引っかかる感じがしながらも二人の会話にとりあえず瞑目したまま耳を傾けた。 「あ、いいもの見ーつけた」 「え、ちょっ……それで何す――」 「んー? いやこれぶつけたら起きるかなーっと。起きたら帰ってくれるでしょ?」 私の勘が危機察知を告げる。 それを頼りに思いっきり目を開くと目の前には沢山の綺麗な花がささったままのどでかい花瓶が掲げられていた。 それも花瓶を掲げている方は素敵笑顔を浮かべていらっしゃるではないか。 着流し着ているからとか、ここは純和風の部屋だからとかいう判断材料で多分ちゃんと幕末に来れたんだ、とか呑気に考えれる余裕はなかった。 「あ、起きた」 背中に嫌な汗が流れる。 「まさか――」 「あぁ、コレ? 君が起きなかったら実力行使に移させてもらうつもりだったんだよ。良かったね、早く起きて」 あぁ、そうなんだ……。 はぁ、良かった良かった。
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