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…見つかってもーた。
これまでの経験上、普通の人間に出会してええ思いをしたことがない。
逃げよう。
そう思ってその人間の顔さえ見ずに走り出そうとした時だった。
「ま、待って!」
腕を掴まれた。
これや逃げられへん。
「大丈夫、怪しい者ちゃうで?」
「……。」
「俺は、大倉忠義。自分名前何て言うん?」
「…リョウ。」
不思議やった。
人間は、酷い生き物の筈。いや、ほんまにそうやねん。
でも、今俺の目の前に居るこいつは、何となく違う気がした。
「んふ、リョウちゃん。その様子やと、お家はない?」
俺は、オオクラと言う人間を睨みながらもその言葉に頷いた。
俺には、家がない。
両親も、友達と呼べる奴らも、財産も、地位も。
何もかもない。
「そっか。よし、おいで。」
「……。」
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