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オオクラは俺が何も反応を示さないのを勝手に肯定的に捉え、俺の手を引いて歩き始めた。
俺はこれから、何されるんやろ。
身体を求められるんやろうか。でも、それなら都合がええかも。
正直、そういうことはこれまで何度かあった。さすがに、初めてのときは驚いたし、怖かった。
けれど身体だけなら構わない。大抵は食事や、温かい寝床を与えてもらえるから。
「着いたで、リョウちゃん。」
声をかけられて顔を上げると、目の前には見上げきれない(とまではいかないが、それに値する)程の、所謂『高級マンション』。
「で、か…っ。」
「んふ。」
―…『んふ』。
何度か聞いた、こいつ独特の笑い声。嫌いやない。
いや、今はそれどころではない。
ここが、こいつの家なのか。
俺のような見窄(みすぼ)らしい家なしが、果たして立ち入って良いのか。
大倉はエントランスからオートロックを開け、俺の手を引いてエレベーターに乗り込んだ。
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