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ヤスと大倉を見習う、か。
…納得行かない。彼奴等のようなバカップルになれとでも言うのか?
毎日毎日、俺が気が付くと「好き」と言い合い、口付けを交わす。
俺もヒナも、正直いい年だ。初めて付き合った中学生のような恋愛にはもう興味はない。…少なくとも、俺はない。
―いや、まさか。
―――――――――――――
居酒屋の会計を済ませると、俺はヒナの家に向かった。僅かな期待と確信を胸に。
『はい。…ヨコ?……ちょっと待ってな。』
「ん。」
インターホンに出たヒナの声は、分かりやすい程驚いていた。それもそうだろう。よく考えれば、俺からヒナの家に出向くのはこれが初めてだ。いつも自然に立ち寄っていたが、ヒナ自身も一緒だった。
「おう、来たったで。」
「…入れや。」
我が物顔でズカズカと上がり込み、リビングにあるソファーに座った。
「…ん。」
目の前のローテーブルに置かれた一杯のコーヒー。
こういうさりげない心遣いが出来るところが、ヒナのええところやねんな。別れてから改めて感じた。
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