不安

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「亮ちゃん」 「ん?」 楽屋のソファーに胡座をかいてギターを弾く亮ちゃんの隣に座った。 呼びかけるとその手を止めて、俺に微笑みかけてくれる。 「…浮気、してへんよね?」 思わず出た言葉。 そんなことありもしないって分かってるのに。 「は?いきなり何やねん。」 怪訝な表情を向ける俺とは対照的に、相変わらず微笑みを浮かべながら俺を見つめる亮ちゃん。 「……、」 俺が何も言えないでいると、亮ちゃんはギターを置いて俺の頬に手を添えた。 細くて、でも適度に男らしく骨っぽいその指先はとても温かかった。 「俺、不安にさせてた?」 思ってもみなかった亮ちゃんからの言葉。 違うのに、俺はそんなつもりで言うたんちゃうねん。 「分かってるよ。さっきのは本心ちゃうんやろ?」 「…亮、ちゃん」 「俺は好きやで。お前のこと。他の誰よりも。お前がどんなに不安になっても好き。」 そう言った亮ちゃんの笑った顔はほんまに綺麗やった。 言葉なんかでは表せない美しさ。 「…やから、そんな顔すんな。」 唇に触れた温もり。 それは俺の中の糸を切るのには十分すぎて、気付いたら俺は泣いていた。 「ごめ…っりょ、ちゃん。俺っ…」 「ふはっ。もー、泣くなよ。やからヘタレや言われんねん。」 「……っ、」 …やっぱり、亮ちゃんもヘタレな俺が嫌いなんかな。 直さなあかんよな、これは。 「ええねん、直さんで。俺は今のままのお前が好き。ヘタレでも、泣き虫でも、忠義やから好きやねん。」 涙に濡れた頬や、赤く熱を持った瞼に口付けてくれる亮ちゃん。 嬉しい言葉に、嬉しい温もり。 俺に出来ることは何やろう。 …今は分からんでもええか。 やって、これから亮ちゃんの隣でゆっくり考えられそうやから。 end.
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