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体調が悪いなんて一言も言っていないのに、俺がその問いかけにうんともすんとも答えないからか、勝手に解釈したようで。また、いつの間にか自分の家の玄関の前でじゃあね、と手を振る大倉になぜか申し訳ない気がした。
足が勝手に前に進んで、腕が勝手に俺よりも一回り大きな大倉の背中に回っていた。
大倉に抱きつくのは初めてではない。でも、小学生のとき以来だから久しぶりだ。だから、心臓がドキドキしている。大倉にも聞こえてるかも。
「…で、で…っ」
「…亮ちゃん?」
「っ…デート楽しみにしてるから!」
「…んふ、そっか。俺も楽しみにしてる。」
「ん…。」
俯いたまま早口で言いたいことを吐き出して、ふと上を見上げると、さっきまで留まっていた夕日は落ちていて、薄暗い中、今度は街灯のオレンジに照らされた大倉が嬉しそうに微笑んでいた。
俺をじっと見つめてくるその視線が恥ずかしくなって、すぐに目を逸らして抱きついていた腕を離した…はずなのに。
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