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「街を歩くカップルの方々、家で性なる夜を過ごす方々及び友人とパーティーなんかをやるという人生を謳歌している方々! 今宵のクリスマス如何お過ごしでしょうか? 孤独な貴方には朗報、それ以外の方々には残念なお知らせがあります」
「政府の発表により今年からクリスマスという行事は禁止、並びに中止となりました。阿保山国家首相によるとクリスマスという行事は宗教的な儀式にあたり、無宗教国家として宗教的行事を支援するのは如何かとの議論の結果、このようなクリスマス禁止法案が可決されたそうです。同時にお盆の休暇なども中止されるために世間からは非難の声が轟々と吹き荒れそうです」
「なお、バレンタインデーは宗教的な行事ではないため続行をするとのことです。」
ニュースからそんな男性キャスターの声が聞こえた。若干喜んでいるように聞こえるあたり、どうやらこの男性はロンリークリスマスの予定だったのだろう。
「クリスマスの中止、ね……」
俺がつぶやくと横にいた同僚が眉間に皺を寄せて言った。
「楽になったと見るか、はたまた苦しくなるとみるか……」
「恐らく、後者だな」
クリスマスが与える影響はかなり大きい。ましてやこのご時世、クリスマスという行事の間に需要が増える業種にいる人間にとっては相当な苦痛だ。
「げ、もう用意しちまったよ」
「来年の金あるか?」
「興信所代金も馬鹿にならないのに」
「はあ、またバイト生活かな」
みんな口々に呟きながら愛車の手入れをしている。かくいう俺もそろそろ時間だ。「日本はクリスマス禁止」らしいから今年から巡回ルートから外れ、少しだけ配るのは楽になる。
「おっしゃ、いくぜ!」
愛車のTNaK-A1004号を発進させて空を飛ぶ。夜の空にきらきらと特別なエンジンが軌跡を描いた。
「メリークリスマァァアス!」
そういえば日本支部のやつ、リストラか。
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