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幽玄
私のなかの勝爺は生きている。だが、実際はいない。あの事件というか悲劇から一ヶ月たった。
何もかわらない家の状態・・そして、悲劇の連鎖ばかり・・友の光次郎の安否がわからない。
只、今は生きることで精一杯なのである。空の鬼が私達の平和を乱したのだ。
母はよくわからない流行病にかかってしまい病院に行っても“わからない”それだけを医者につきあてられるばかり、そんな時母が言った。
「寅次郎・・・ごめんね。私の・・せいで。」
私は目蓋から塩っぱいものがでないように堪えて、
「そんなこと・・・ないべ。母ちゃんを守ると父ちゃんと約束したし・・生きよう。母ちゃん。あのお寺で水を貰おう!!」
私はとにかく目の前の寺に母を連れていこうとしたのだ。
目の前に着いた。
その寺は、神秘的でどことなく・・・来たことが有るような雰囲気がした。
寺の住職が出てきて「どうなさいましたかな?」私の母を見るやいなや「顔色がよくござらんなぁ!?
さぁさ、中に入られよ!!」と初めて受け入れてくれた。奧の間に入るにつれて胸が鼓動する・・・。
そして、幽玄の間という場所に連れて来てもらった。母もその時は顔色が普段どおりになった。ここは、神秘的な所ではなく神秘な所なのだろう。
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