二人の寅次郎・

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二人の寅次郎・

今思えばあの胸を過ぎたと感じた時。 あれは私と同じ寅次郎だったのかもしれない。 そう、本因坊秀策という世界一の強さを持つ。 棊打ちを知ったのがこの日だった。  私が名乗り終わった時、空秀さんが驚いていた。 「あなた様は囲碁を知ってはりますか?」 「はい、1ヶ月前に教えてもらい三段です。」 「やはり・・天は私に運命の子にあはせてくれた! 寅次郎殿少し私とともについてきてくだされ。」 私はいうわれるがままついていった。 ついた場所は、碁盤と掛け軸がある何とも静かな所。そして、空秀さんが言った「あなた様と一局打ちたい。かまいませんかな?」 私は、首をかくりと頷いたそして、碁盤の前に座った。 その碁盤も過去に見たことがあるような気がした。 私が先で始まった。 初手に天元を打ったのはこれが初めての対局だった。その部屋に石音が響いた。掛け軸もこの棊を見ているような気がした。 空秀さんがコスミに置き、私が掛かった。 するとハサミを打ってきた。 一間で逃げた。 空秀さんが腰に挿していた扇子を取出しこういった。「追うは桂馬逃げるは一間。 それは、置いておこう。 天元とはおもしろい所に打ちますなぁ。しかし、この空秀も負けてはおりませんぞぉ!ははは。」 私も気を引き締めた。 しかし、空秀さんの一手が厚く崩しにくくなってきた。 打ち込みも迷う・・・。 しかし、勝ならこの二線渡りからのヨセ・・・。 それか、左上の三の三。 読まなくては・・・。
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