第1話

3/20
146人が本棚に入れています
本棚に追加
/1220ページ
「ほら、しゃんとしなさい。今日から3年生なんだから」 朝食を取り、ボーッとしている少女の髪を整える先程の女性。 どうやら、彼女が保護者のようだ。 「ねぇねぇ」 ここで少女が口を開く。 「何?」 「昨日さ、お父さんの夢を見たの。あと、お母さんと、陽さんと、友矢さんと、わたしと」 少女は昨夜の夢の話を語り出した。 「へぇ、みんなで何をしてたの?」 「あのね、お父さんがわたしとゲームしてて、友矢さんがそばでそれを見てて、お母さんと陽さんはお料理作ってた。みんな楽しそうだったよ」 嬉々としてそれを話す少女の目は輝いていた。 「そう。正夢になれば良いわね」 「…うん」 しかし、その目の奥にはどこか寂しさが潜んでいた。 「さぁ、髪型整ったわよ。いつも通り、元気に行ってらっしゃい」 女性は髪留めのゴムを二つ、少女に渡す。 「うん!」 少女は後ろ髪を左右に分け、持ち上げてそれぞれゴムで結んだ。 すると、少女は短めの二つ括りの髪型になり、活発な印象になる。 「それじゃ、いってきまーすっ!」 そして、少女、神崎空(カンザキ ソラ)は元気良く家を出て行った。 「いってらっしゃい」 その女性、神崎陽(カンザキ ヨウ)は手を振って空を見送った。
/1220ページ

最初のコメントを投稿しよう!