外側、亡命。

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無視した日から、何日かがたった。あの河川敷には行かなくなり、代わりに放課後も図書室で過ごすようになった。帰ってから「友達と遊んでた」って言うためのつじつま合わせ。暇人も楽じゃない。 そんな間にも、世界はめぐるましくまわる。図書室に通うようになってからというもの、毎日、新聞を読むようになった。しばらくして政権が交代した。マスコミも対立の政党も、こぞって新与党の汚い部分を洗い出しているらしい。弁明を弁明をって、弁明したところで世間が良くなるわけじゃないのに。話の中心が間違っている気がする。あとは野球のなんとか王子に、隣の国で小競り合いがあったとか、でかい記事はそういう話。 そんな新聞の、隅っこのほうに、私信欄がある。ヤツは運がいいと言うべきだ。それとも俺が新聞を読むだろうことを知っていたか。悟ったような話をするし。とにかくそこにはこうあった。 「俺は毎日居る 和田」 何故かはわからないけれど、胸が締め付けられて、行かなきゃいけないという気持ちに駆られた。 ぽん、と肩を叩かれた。図書室で良く見かける顔。 「いつもいるよね。名前は?」 小柄の体格に眼鏡、ニキビがすこし、なんかなよなよしい物腰。にこにこともにやにやともつかない笑顔で続ける。 「君には悪魔がついてるね」 僕は和田のところに行くということを、体からも頭の中からも放り出した。
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