夕焼けの前で

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  続いて帰って来た男子に、一言「なぁ」と言って、続きの言葉を引っ込めた。こいつ、にやけてる。背中の方でわざとらしい声がした。 「あれぇ。あそこに鞄落ちてねぇ?」 窓の外、三階にある俺らの教室から、落とされたであろう鞄。俺は声を殺して、叫んだ。俺のクラスの男子は十三人。ニジュウヨンの瞳をつきつけられて、こんなに泣けるなんて、俺は知らなかった。 「なんでさ……」 言葉を失って、俺は鞄もとりに行かず、席に座り込んだ。なんでか、分かっているじゃないか。一年の時から仲良くしていた野瀬も、俺を見てにょいーんと笑っている。面白いんだ。これはゲームだから。だから俺も精一杯楽しむしかない。だって、これはゲームなんだから。
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