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情けない顔が土手を歩く。結局、目を離せば体操着がなくなるという繰り返しを一日中していた。その度に無理矢理吊り上げていた口の端が、だんだんと下がっていって、あとはもう意地で、瞼の裏に潜む熱い液体を強引に押さえ込んだ。
夕焼けを遠くに見て、赤いなぁ、とかどうでもいいことを思う。こんなことを思うのは独りだからだ。土手から河川敷に下りる階段の、一番上に腰掛けた。紫がかった空、陸橋の向こう側に日が落ちるのを見届ける。
滔々と流れる川は綺麗だ。同じ水なのに、どうしてこのあふれる涙はこうも汚いのか。きっと汚れた世界から、自分を守るためだ、とか、勝手に決め付けた。
でも、
「守り切れてないよ、俺」
涙は溢れる。溜め込んだ淋しさのコップから。
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