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少女は目をカッと見開いた。
その黒いはずの瞳は真っ赤に染まっている。
少女を台に縛り付けていた枷が弾き飛ぶ。
白衣の男は信じられないといった顔で後退り、やっとの思いで卓上の非常ボタンカバーを叩き割った。
直後、部屋が赤く照らされ壁がスライドし、人の顔が付いた約3メートル程の機械が姿を現した。
人体実験により首に無理やり機械を縫い付けられたのだろう。
覚醒した少女は隣に磔にされている少女に急いで近づき、その枷に手をかける。
その時自分の腕を見た少女は驚愕した。
腕、足がふさふさした茶色い毛で覆われていたのだ。指と指の間、本来水掻きがあるところに鋭い爪が伸びていた。
足も膝より下が毛で覆われている。
更に床に落ちている自分の影を見つけた。
毛皮で太くなった手足、体、頭。そして……
「……うさ耳?」
頭の耳を触りながら少女が影を観察していると足元にいきなり無数の穴が空いた。
驚いて顔をあげると機械の二本のアームに付いたレーザーガンが紅く光っていた。
少女はあわてて磔にされている少女の枷を素手で引きちぎると、本能的に少女を肩に担ぎ直ぐ横に跳躍した。
次の瞬間、無数の光弾がとび先程までたっていた後ろの壁をぼろぼろにする。
機械はアームの角度を調節し、横に跳んだ少女を追いかけるように後ろの壁に穴が空いていく。
少女は近くにあった手術台の後ろまで転がり込んだ。
機械は容赦なく弾を打ち出し、手術台を削っていく。
少女がなんとかしようと辺りを見回すと、銃弾により剥がされた合成素材でできた壁の一部が落ちているのを見つけた。
少女は担いでいた気絶している少女を下ろすと、台の陰から身を低くしながら飛び出した。
光弾の嵐が少女の後を追いかける。
少女はダイブして建材の破片を手にとり、そのままの勢いで転がった。
勢い殺さず手にした破片を機械に向かって投げつける。
少女の獣のような腕から投げ出されたそれは、唸りながら弧をかき機械の心臓に向かった。
鋭利な角は頑丈な装甲を軽々と突き破る。一瞬の出来事だった。
機械から光が漏れる。
次の瞬間、轟音と共に部屋を爆風が包んだ。
機械の後ろにいた男もエネルギーの波に飲み込まれ消えていく。
ウサ耳少女のシルエットが光の中に浮かび上がっていた。
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