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少女は、痛さに耐えながら上体を起こし、はいつくばりならが車椅子に移動した。
足の自由が効かない少女には、車椅子が唯一の移動方法。そして、自分の居場所。
車椅子のレバーを引いて、タイヤにブレーキをかけて手摺りに手を伸ばす。
腕だけの力で体を立たせ、椅子の部分に腰を落とす。
「………」
小さい息を吐き、外の景色を見て思った。
私はあと何回、いじめに遭うの?
私はあと何回、この景色を見られるの?
私はあと何日、生きられるの?
誰に問いかけるでもなく、自分の中でぐるぐると回る思考に、嫌気がさす。
それでも考えてしまう。矛盾しきった考えが少女の中で巡る。答えが出るはずもなく。
「…………痛い。」
体中が痛い、今は動く気にはなれない。ふと、外の景色を見ると、紅葉のような夕日が沈みかかっていた。
「………本当にうらやましい。」
隔離された場所から出はなく、本当の外に出て
景色を……
風を……
花の香りを……
この目と耳と鼻で確かめてみたかった。
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