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「……涼しい。」
風の音を聴き、優しく語りかけているかのように感じていた。
ふと、外から子供の声が聞こえて来た。少女は、目を開け窓を見下ろすとはしゃぎ回る子供の姿が見えた。
子供達でボールを蹴っていたり、楽しそうに話していたり、絵本を読んでいる子供達がいた。
「……いいな。」
小さく呟く。
少女は外に出たことがなかった。重い病気のせいで、一歩も病院から出たことがなかったのだ。
外の景色、草木や花の匂い、街の風景を……
だから外の景色をいつも見ていた。いつか出れると信じていた。
だが、それが叶わないと少女は知っていた。自分の命が長くない事を……
「……外、出たいな。」
だからこそ、一度でも良いから外に出てみたかった。でもそれは叶わない、叶えられない。
病院の先生達に迷惑をかけてしまうから。
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