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少女はこの病院で育ち、今まで生きて来た。だから母親の顔も父親の顔も知らないでいた。
産まれてすぐに病院の前で捨てられていたのだ。病院の先生達が母親、父親代わりに少女を育ててくれた。
優しくしてくれたから迷惑をかけてはいけないと思っていた。
「どうしたんだい?今日は元気ないね。」
不意に少女に話しかけてくれた男がいた。その人は、此処の院長をしている人だった。
少女を育ててくれた人でもある。病院で引き取るようにしたのもこの院長である。
「……いつも通りです。」
「そうかい。」
そう言って少女の隣に立ち、窓から見える外の景色を眺めていた。
「良い景色だね。今日も良いことがありそうだね。」
「………はい。」
院長の問いに小さく答え、少女と院長は外の景色をずっと眺めていた。
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