黒髪の少女

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移動してテーブルに着き、トレイをテーブルに乗せ車椅子をテーブルにくっつけた。 向かいには院長さんが座る。医者側も患者とコミュニケーションは必要で、食事は患者と一緒に行っている。 重患者や寝たきり、認知症の患者は室内で食事を摂っている。 「………いただきます。」 少女がいただきますを言うと、嬉しそうに少女を見ながら、いただきますを言った。 黙々と食べる少女に、院長は話し掛ける。 「最近、怪我が多いみたいだけど、いじめられているのかい?」 動かしている手が止まり、少女は院長を見る。院長も視線を逸らさずに少女を見つめる。 「………ただ、転んだだけ…」 口を開いたかと思えばそれだけを言い、少女は食事に集中する。 院長もそれ以上問いただす様子もなく、食事をする。だが院長は、少女が転んだだけとは到底思えなかった。 最初は、ただの小さな擦り傷だけだった。だがここ数ヶ月で怪我の回数が増えている。 それも普通の擦り傷などではなく。捻挫や切り傷、痣等が数ヵ所に増えていた。 少女が走り回ったり元気に車椅子を動かしていれば、起こる事かもしれない。 だが少女は、いつも外の風景を見ているだけの大人しい子なのだ。 それが多くの怪我をして来るのは不自然だと思った。
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