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食事を終えて、少女はいつものように自室の近くにある窓から、外の風景を見ていた。
私が長く生きられないって知ったのは一年前、私が六歳の時に院長さんから聞かされた。でも、何も感じなかった。
私には、名前がない。
私には、家族がいない。
私には、なにもない。
自分が誰なのか、自分のママとパパはどこにいるのかも知らない。
何もしないで、何も知らないで死にたくない。
だから院長さんや看護婦の人達に迷惑をかけないように、自分の事は自分でやると決めた。
(………)
窓を開けると、風の音と木々の香りが広がり、一羽の小鳥が少女の膝の上に乗る。
[今日も元気ないね。]
[……大丈夫、いつも通り。]
小鳥が頭に直接語りかけ、少女も同じように小鳥に話し掛ける。
でも私が出来るのは、ほんの些細なことだけしかできない。むしろ怪我が多くて迷惑をかけている。
[元気だしてね。]
[………うん。]
小鳥が、少女の肩に乗り頬っぺたを舐める。少女は手に小鳥を乗せ優しく撫でた。
自分も小鳥のように、羽ばたきたい。自分も小鳥のように外を自由に行きたい。
少女は心の中で、小さくそう思っていた。
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