太陽と月

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 そうして太陽は、今までの自分のことを考えました。もしかしたら、今まで自分がしくしく悲しいときにはお月様も悲しくなっていたのではないだろうか、と。そう思ったとき、太陽は少しだけ反省しました。 「お月様、今までごめんね。私の悲しいのが、お月様も悲しくしていたかもしれない。ごめんね、ごめんね」 「いいんだよ、太陽さん。悲しいのは雲君がふわふわのタオルで拭ってくれたじゃないか。雲君も、私も、太陽さんが悲しいときはその悲しいのを分けてもらって小さくすることも出来るんだよ」  それを聞いた太陽は、海の鏡の上でぎゅっとタオルを絞っていた雲君に向かって言いました。 「雲君、今まで私の涙を拭ってくれてありがとう。今度からは君にも私の楽しいのや嬉しいのを分けられるように、頑張るよ」 「やぁ、太陽さん、そんなことは別に気にしなくていいんですよ。でも、太陽さんが嬉しいのは私も嬉しい。悲しいときには遠慮しなくてもいいから、嬉しいときも遠慮しないで思いっきり笑ってくださいな」 「ありがとう、雲君」  そう言って太陽は、今までになかったくらいぴかりぴかりと、満面の笑顔で輝きました。  それを見たお月様もぴかぴかと、優しい笑顔で光ります。雲君も嬉しくて、真っ白になってふんわりと空に浮かんでおりました。 「私が幸せなとき、誰かもまた幸せになれる。それってとても幸せだねぇ、お月様」 「そうだね、太陽さん」  太陽と月は、二人そろって嬉しそうにぴかぴかと輝いておりました。  それからと言うもの太陽は、時々泣いてしまうことはあるけれど、今までよりも笑顔でぴかりと光っていることが多くなりました。
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