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そのドラゴンは煙と同じ、赤黒い身体をしていた。大きさは人の頭ぐらいあるだろうか。翼を持ち、鋭い爪を携え、眼からは何故か炎を上げていた。いかにもRPGに出てきそうだ。
『あ?何で俺様の姿が人間に見えてン………ぎゃああァあああァあァァあ!?!?!?』
次に驚いたのはドラゴンの方だった。
『何だよコレ!?何で俺様が封印されてンだよォォォォ!?!?』
そう叫んでから、ドラゴンは俺の胸ぐらを掴んだ。
『オメェ一体何モンだ!?チックショウ、何で俺様がこんなガキなんかに!!』
「こっちが聞きたいよ。お前こそ何なんだ、俺の腕から勝手に生えてきて!お前は一体何なんだ!?いつから俺の身体にいた!?俺の身体はどうなっちゃったんだよ!?」
『俺様は』
案外すんなりと教えてくれるらしい。逆ギレされるかと思ったのに。
『俺様の名はナック・ミール。オメェら人間を喰らう乖(カイ)と呼ばれる生き物だ』
「喰ら……?」
『安心しろ、俺様は今お前に封印されていてお前を喰うことができねェ。お前が死んだ瞬間俺様も消えちまうからな』
「ちょっと待てよ。封印って何だよ?俺はお前を封印した覚えは無いぞ」
『知らん!!俺様だって好きでオメェに封印されたワケじゃねェ!!細かい話は後だ、ほら、来るぞ!!』
すっかり忘れていた。もう一匹、変なのがいたのだった。黒い液体は、俺に向かって来た。多分俺を仕留めてから楓ちゃんを襲うつもりなのだろう。
「どうすりゃいいんだ!?」
『落ち着け、心を無にしろ、とにかく無にしろ!!』
そんな簡単に言われても、どうやったらこの状況で心を無にできるんだ。アバウトすぎる。とりあえず俺は目をぎゅっとつぶり、何も考えないようにした。
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