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『もういいぞ』
その声と共に俺はそっと目を開けてみた。すると何と、俺の両手が炎で覆われているではないか!
「うおわ!?あっつ!あっつ!あっつ……くない?」
炎が燃え盛っているのに、見た目程熱くはなく、生暖かかった。そしてどうもそれは両手にいつの間にか装備されたグローブのせいらしかった。
そのグローブは赤黒い色をした、硬い革のような素材でできていて、拳を握る度にギチギチと革特有の音を立てた。手の甲には動物か何かの骨のようなもので装飾がされていた。
珠を抱き、とぐろを巻いた焔の竜だ。
漫画に出てきそうだ。恐らくメリケンサックと呼ばれるものだろう。まぁつまり……
「……俺に戦えと?」
『ッたりめェだろ!!それ以外に何があンだ?』
即答かよ……。
そして俺はあのナックなんとかの姿がどこにも見当たらないことに気付いた。
『心配すンな!俺様はチキンなおめェのためにココにちゃんといッからよ!!』
「なっ……チキン言うなっ!!ていうかどこに行ったんだよ!?」
『ココだよココ。オメェの心ン中だ』
そういえばさっきからずっとこいつの声だけ変に頭に響くように聞こえていた。そうか、こいつは俺の心から話しかけてきたのか……俺一人だけ喋って、まるで俺が変な人みたいじゃないか。
『ボヤいてないでサッサと行くゼッ!!火加減は俺様に任せな!』
腕から上がる炎が強まった。
『オメェはとにかく相手を殴るんだ、わかッたか?』
殴り合いの喧嘩なんてめったにしたことが無かったが、多分大丈夫。
「おう!」
俺は黒い何かに向かって走り出した。
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