Chapter01

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日が暮れて、もう近辺の家々に灯りがともり始めた頃、俺は石沢商店前の自販機で缶ジュースを買っていた。 「あ、玖珂くん?」 その声に俺は振り向いた。 「あ……」 「やっほー♪」 楓ちゃんだった。 「玖珂くんってこの辺に住んでるんだ?」 暗がりで顔がよく見えないが、声のトーンからすると微笑んでいるようだった。 「ああ、まあな……かえ、み、美那野もこの辺に住んでるのか?」 いかんいかん、俺。 危うくちゃん付けで呼ぶところだった。恐ろしいな、楓VOICE. 「うん。あの角のアパートで一人暮らししてるの」 「そうなんだ……一人じゃ寂しくないか?」 「ううん、平気。わたし親いないし」 「えっ…」 これはまずいことを聞いてしまったんじゃないのか? 「あ、あのっ!……悪い、変なこと聞いちまったな……」 せっかくいい雰囲気だったのに……俺ってば最低最悪だな……。 「だいじょうぶ、慣れてるから。それにわたしの親、どっちもわたしが生まれてすぐに死んじゃったから、あんまり実感わかないんだよね」 「そっか…」 「じゃ、そろそろ帰るね。また明日会おうね、バイバイ」 そう言って楓ちゃんは去っていった。
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