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長老は暑苦しいスーツ軍団を舐めまわすようにゆっくりと端から端まで厳しい視線を向けてから、「この島をよく見ろ」といって森の方へ身体を向けた。
砂浜のすぐ奥には緑豊かな森が広がり、鳥のさえずりが聞こえる。色鮮やかな花も咲き乱れている。島民は観光業で得た資金をもとに、夜は十分な食糧と酒で飲めや歌えの宴を繰り返す日々を送っている。それはまさに楽園と呼ぶに相応しかった。しかしこの森が島の三分の一強を占めるため、居住地域は手狭といえた。人口密度はかなり高い。
「ここにはいろいろな動物が生息している。植物もだ。しかし資金が豊富だから狩りをしないし、森林も伐採していない」長老が再びスーツ軍団に向き直った。「我々は昔から物資を輸入に頼ってきた。ほかのところから食料を調達することによって、この島の環境保護に努めてきたのじゃ。二酸化炭素の排出量にしても、火を使うのは肉を焼いたりスープを煮込んだりするときだけじゃった。もっとも、現在ではその火をも使ってはいないことをおぬしらはよくわかっている筈じゃ」
「ええ、おっしゃるとおりです…」
長老はどこにも迷惑をかけていないといわんとしている。自分たちには非がないと。しかしそれが理解できるだけに、日本人は曖昧な返事しかできない。
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