地盤沈下

「二年前、そなたらの提言で島全土をオール電化にすることを受け入れた。我々も、地球が危ないということを理解したからにほかならんことじゃ」

　日本人はぐしょぐしょになったハンカチでしきりに額の汗を拭い、申し訳ないといった様子で顔を伏せている。ハンカチは本来の役目を果たすのではなく、たんに落ち着きがないからそうしているだけだった。

　現在の世の中では、全世界の全住宅でオール電化が義務付けられている。十年前、日本が議長国となって開催された世界環境会議で決まったことだった。この島の説得には、実にまる八年もかかったというわけだ。

「何度もいうが、我々は環境破壊などしていない。それにそなたらのいうことにも従った。なのになぜ島がなくならなくてはならんのじゃ。わしらになんの恨みがあるのじゃ」

　声を荒らげる長老に気圧され黙りこくっていた日本人だったが、ようやく意を決して重い口を開いた。