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「彩華さま、彩華さま」
「うん・・・」
「珍しいですね、うたたねですか?」
「あぁ、応援依頼か?」
「今日の動きはないようですよ。・・・どうなさいました?」
ちらっとあげた視線に俺は軽く頭を振った。
「じじぃの夢を見ていた」
「御前の、ですか?」
俺は大きく伸びをしてから、あくびをかみ殺した。
「あぁ」
俺は昔の記憶がない。
御前、と呼ばれるじじぃの怪盗現場に小さな俺が転がっていたらしい。
それさえも覚えてはいない。
じじぃに拾われ可愛がられて育った・・・と思う。
そんなある日、俺は外にほっぽり出された。
「お前は俺と違って体力がないから、怪盗をする気なら違うやり方を探すがいい。上手く出来たら一人前だ。行って来い」
それだけかよ・・・。
課されたMissionは、シーフのスキルを身につけて来いという。
手下を率いて仕事をしたことのない俺はすぐに行き詰った。
じじぃの元相棒らしいじいや、と呼ばれるやつがアドバイザーとして俺に語りかける。
昔のことを話したがらないのでじじいとの過去は不明なままだ。
「お前さんの腕前じゃ他の怪盗とやりあうことはムリじゃな。まずはMissionをこなし、腕を磨くことからはじめることじゃ」
・・・うるさい。
スリなんてちまい仕事をしてる奴らにそっと近づき仕事ができねぇように潰していく。
そりゃしくじった事もあるが、俺は間違いなく腕をあげ専業のスリからもあっさりとスリ盗れるまでに熟練していった。
そんな中でじじぃの元から俺についてきた手下頭(俺の兄弟子だ)が、俺にクロウナイフと共に数枚の紙を差し出した。
「凶悪な連続強盗犯の逃走経路を入手いたしました」
冷たく光る刃を見ながら俺が逡巡したのは一瞬だった。
「よし、行こう」
失敗と成功を繰り返しするうちにじいやが言った。
「その腕前はもはや見習いではない。シーフとして活躍するといい。そろそろ他の怪盗と実力試しもしたらどうじゃ?」
腕試しねぇ。
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