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麻薬組織の根城へ資金源を押さえにかかっていた時のこと。
ほぼ壊滅させた事務所の中で、ふと何かが俺の気を引いた。
マルーンブラウン
じじぃの目と同じ色をした赤銅色のきらきらしたコインだ。
シーフの報告をしに1度帰るつもりではいたが、いい土産が出来た。
幸先のいいことに帰る道すがら見つけたスリから仕事道具をスリとってやった時に、その懐からコインが転がり出た。
マーズレッド
その赤いコインを箱に収めると俺は手下に預ける。
ブラウンを入れた箱は俺が直接じじぃに押し付けてやるつもりでいた。
俺のはじめての戦利品だ。
じじぃにとっては大したものではないが、俺の初戦果を喜んでくれるだろう。
ばたん。
ノックもなしに俺はじじぃの書斎のドアを開け放った。
いつものことだ、じじぃは驚きもしないで俺を迎えた。
「何しに来た」
え?
いつものように迎え入れてもらうつもりだった俺は面食らった。
「俺、じいやにシーフとして認めてやるって言われて・・・」
「知っている」
いつになく冷たいじじぃの気配に俺はたじろいだ。二の句が次げない。
「それでお前は何をしているのだ」
何って、じじぃの前に突っ立ってるじゃねぇかっ。憮然とした俺に、じじぃは思うところがあったのだろう。
「マーズレッドとマルーンブラウンを入手したと聞いた」
うんうん、それそれ。
さすがに情報が早いな。
特にマーズレッドはまだ数時間経っていない。
コンプしてないけど、美しいコインは2つ俺の手の中にある。
「それで、お前は何をしているのだと聞いている」
質問の意図が読み取れず戸惑う俺の後ろから、生臭い匂いと荒い息が聞こえてきた。
開け放たれたままだった扉へ、1人の男が飛び込んでくる。
「申し訳ありませんでしたっ」
振り返った俺の目に映ったのは、マーズレッドを預けた手下だった。
左腕が切り裂かれ、袖が赤く染まっている。
今まで計画を練って動いて、ほぼ成功し続けてきた俺には、この異常事態に絶句するほかなかった。
目を丸くする俺には目もくれず、じじぃに向かって頭を地面に擦り付けるようにして下げる。
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